第2章 湖水

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 車に向かって歩いていく時,優志と涼は腿の筋肉がプルプルして上手く歩けず笑うしかなかった。優志をハーレー家の前で降ろすと,ブライスも降りてきて優志と玄関口まで歩いた。それからかけていたサングラスを頭上にずらした。 「ユウシ,ウィンドサーフィンをマスターするまで練習を続けるから,覚悟して。腿の筋肉はきちんとクールダウンさせること。水泳をしていたんだからやり方は知ってるね」 「ああ,大丈夫」 「俺はこれからリョウがクールダウンするのを監督する」  ブライスが鬼コーチといった風ににやりと笑った。 「ブライス,君の時間を取るし面倒をかけてすまない」 ブライスは少し頷いて微笑んだ。 「俺はかなり面倒見がいいんだ。それに,ユウシ,君には話を聞いてもらって感謝している。とても嬉しかった」  ブライスは優志の左腕に手を添えて目を見つめた。 「じゃあ,また明日」  ブライスの手に僅かに力が加えられたのを優志は感じた。気持ちのこもった温かい感触だった。  翌日3人は,午前中3時間ほどウィンドサーフィンの練習をした。優志は徐々にボードを進める距離を伸ばして喜んだ。遼は優志ほど上達が見られなかったが,ただ3人で騒いで過ごすのが楽しいようだった。ブライスは自分で言ったとおり,忍耐強く親切な指導者だった。それに,陸では麻衣子とジェニファーが見ていてくれていた。  午後はブライスとジェニファーが車を連ね,シアトルの街中の観光に連れ出してくれた。まずパイク・プレース・マーケットに行きシーフードサンドやピザで昼食を済ませた。お土産屋をぶらぶら歩いたあとジェニファーが,ここは外せないでしょ,と連れて行ったのはスターバックス一号店だった。少し雑然とした感じがして,店内にいすはなく客は立ち飲みが基本だった。長居ができる仙台駅のスタバの方がいいよなぁ,と遼が優志にささやいた。 一行はスペースニードルに登ってシアトル一帯の景色を楽しんでから,ローレルハーストに戻った。
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