285人が本棚に入れています
本棚に追加
門限が近かった。日曜日に麻衣子とは違う女の子のホストファミリーが,みんなを海のクルーズに誘っているという。優志もブライスも参加することにした。
クラブを出てみんなで寮の方に歩き出す前に,ブライスが別れを告げた。
「じゃあ,俺はここで。おっとユウシ, 君の着替えた服,俺の車にあるんだった。臭くなるから取りに来て…」
みんな笑い出した。優志はいたたまれない思いでブライスのあとに続いた。
「みんな先に行ってて。ユウシは車で寮に連れて行くからっ」
寮は歩いて5分かからないようなところだったから,他の5人は歩き始めた。
優志とブライスが駐車場に向かって路地を曲がると,ブライスはそっと優志の腰に手を回してきた。
-…っ。変なところに車を停めると思ったんだ…
優志が逃れようとすると,ブライスが回した手に力を込めた。そして優志の顔を覗いて低く言った。
「酔っぱらったから…」
「ウソだ! ジンジャーエールしか飲んでなかっただろっ」
「そんなムキにならなくても…」
「ウソをつかれるのはいやだ,冗談でも!」
「なるほど…。俺が悪かった。では,俺は今、無性にユウシに触りたい。腰に触っていいか?」
「もうずっと触ってたし!車に着いんたから離れて!」
「つれないな…」
わざとらしくため息をついてブライスは優志から離れた。助手席のドアを開けてもらい,一瞬躊躇した優志は車に乗り込んだ。
ほんの1分ほど車を走らせると寮が見えるところまで来た。しかしそれは門と反対側の場所で,日本人学生の帰り道ではなかった。
「ブライス,今日はありがとう。じゃ,明日…」
すいっとブライスが優志に向き合うように身体を入れてきて,両肩に手を置いた。
「…ユウシ,キスしたい…」
― 何て直球なんだ!
「拒絶しないと,受け入れるものと判断する…」
― …すげぇ勝手…
そう思ったが優志の瞼も勝手に閉じた。
ブライスの唇が触れてきた。ジンジャーエールの匂いがした。ブライスはゆっくりと唇を味わい,それから中に入っていった。抵抗はなかった。優志の口内でブライスの舌が届くところを全て味わった。…全てがゆっくりと時間をかけて行われた。
最初のコメントを投稿しよう!