第3章 接近

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「俺はブライスのことをとても尊敬しているし,いろんな助けに感謝している。貴方に会えたことを,心から嬉しく思ってる。ブライスとこれからも一緒に過ごしていいなら,…友だちとして付き合っていきたい」  視線が下がりそうになるのを押しとどめ,ブライスの目を見て最後まで言い切った。優志はゆっくりと息を吐いた。  ブライスは目を見開いて優志を見つめて,ちょっと空を仰ぎ見てから,穏やかな表情をして口を開いた。 「わかった。勇気を出して話してくれてありがとう。恋人になれなくて残念だけど,友だち,なんだな,俺たち」 「あぁ,もしブライスが嫌でなければ…」 「友だちで我慢するよ。キスも身体に触るのもなし」 「ありがとう,ブライス」 「もともとユウシに想いを伝えようとは考えてなかったんだ。あの魔法のブルーベリーでつい…な。 あぁ,でも,心の中でユウシのことを想い続けるのは止められないと思うんだが…」 愁いを含んだ表情になったブライスは,とても魅惑的だった。どきんと心臓が跳ねたのを感じた。ブルーベリーのことを持ち出されて,自分の行動にも責任があったと認めざるを得ない。優志はぎこちなく言葉を返した。 「誰にも想いは止められないし,それはしょうがないと思う。自分も軽はずみなことをしないように気をつけるよ」  ブライスはそれには何も答えず,優志から離れて車に乗り込んだ。  二人がウィリアムズ家でウィンドサーフィンを始めると,ジェニファーと彼女の父親も加わってセイリングを楽しんだ。優志は正直,他に人がいてくれて良かったと思った。  午後はブライスの家で軽く食べ,それからブライスのパソコンを使って航空工学の情報を集めたり,プリンストンのデータバンクを眺めたり,優志でも読めそうな文献で新しいものを拾って読んだりした。  ブライスが研究していたのは探査機や衛星を載せて飛行するロケットの形状と重量の改良だった。それは優志にも興味深くて話は尽きることがなかった。  二人はブライスの机の前で,くっ着くようにして2台のモニターを忙しく眺め回していた。気がつくと5時半をまわっていた。 「あぁ,楽しかった!ブライス,ありがとう!おかげで気になってた文献も意味がわかったし,来週の講座のプレゼン用にアイディアが浮かびそうだ!」  顔を上気させて優志はブライスに感謝した。
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