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「せっかくブライスと知り合えたんだから,ここで一緒に研究する約束をしておけばいいのよ。あなたたちにとってラッキーなことだわ」
ジェーンがデザートのアイスクリームを勧めながら言った。
「あなたたち,週末も一緒に過ごしていてとても仲がいいのよね。他の学生たちは何をしているの?」
「今日はダウンタウンにでかけてショッピングだと思います。夜はライブを観に行くとか…」
「ユウシとブライスは行かないの?」
「ショッピングやライブはきらいじゃないけれど…,それよりもウィンドサーフィンとか宇宙工学の文献を読んだりとか,ボウの散歩を…するとか…」
「ユウシ,それ,どれもブライスと一緒にやってるよね!」
エリンはそう言って笑い,アイスクリームをほおばった。
食事を済ませてもまだ外には陽が残っていて,みんなで庭に出た。家屋が斜面に建っているため庭は建物より低い位置にあった。植え込みで囲まれた芝生だけのシンプルな庭だ。
ブライスはハーレー夫妻と椅子に座って話し込んでいた。優志はエリンと一緒にボウのボール遊びの相手をしていた。セアラはミュージックプレーヤーで音楽を聴きながら踊っていた。キレのいい踊りっぷりで,優志は時々,いいね,と声をかけた。
やがてブライスが優志のところに来て芝生に腰を下ろした。
「彼らは東部の大学に興味があるらしい。いろいろ尋ねられたよ」
優志はただ頷いた。ふとブライスの学生生活が頭に浮かんだ。とてつもなく頭が良くて洗練された学生に囲まれたブライス。何の遜色もなく溶け込んで,生き生きとしているブライス…。周囲の学生を惹きつけてる…。
ガキみたいな俺に付き合っているのは,本当はつまらないんじゃないかな…。
急に不安を感じて俯いた優志に,ブライスは翌日の予定を話し始めた。午前中はウィンドサーフィンで昼からクルージング。シアトル満喫デーだよなぁ…,ブライスが優志に笑いかけた。
―明日も君と一緒に過ごせて,嬉しいよ。
ブライスは小さな声で言った。
日はすっかり傾いて,家から漏れる灯りにブライスの表情が柔らかく浮かんで見えた。彼の瞳が深く輝いていた。
その輝きが壮絶に綺麗で,優志は言葉もなく魅入っていた。
その晩ハーレー家に泊まった優志は, シアトルに来て初めて自慰をした。
閉じた瞼の裏で,深い輝きを湛えた瞳が,優志の果てる姿を熱く見つめていた。
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