第3章 接近

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「お前,そんなにショックだった?まぁ,そうだよな,今まで頼りにしてたからな…。でも,俺たちの講座だし俺たちの力でやってかないと…。ブライスもそれをわかってわざと突き放すようなこと言ってくれたんだよなぁ」 ―そんなの十分わかってる,そうじゃない,俺がショックなのは…。ブライスに会えないこと…。  その晩,優志はベッドで眠れずにいた。 ―自分はブライスに友人でいて欲しいと願った。話のよく合う,いや…今まで出逢った中で一番気心が知れた友人だと思う。何が合うのか判らないが,ぴたりと気持ちが収まる感じがする。だから毎日会って楽しかった,嬉しかった,これからもずっと会いたいのに…。 ―ブライスは俺たちの講座に対する取り組みを最優先して考えて,会いに来ない,と決めた。確かに俺たちのことを考えてくれたからこその決断だ。 ―それって,厳しい兄のような気持ち? …そこに,友情ってあるのか? 俺がブライスに会いたい,って思うように,ブライスも俺に会いたいって思わないのだろうか。 ―だって,ブライスは俺のこと…愛シテル…はず…。 ―愛シテル…って何だ…?  翌日から優志たちは自分たちで決めた役割に準じて,講座に没頭した。ブライスが教えてくれた資料の公開先もものすごく助けになったし,考えていた以上に指導教官がアドバイスをくれたので安心して作業を進めることができた。  夜,学習室で翌日のための打ち合わせを終え,学生達はそれぞれの部屋に向かった。 「しんどかった!資料集めで目がぐるぐるしてるよ」  疲れを見せて遼が優志にもたれかかってきた。それをぐいっと押しやって優志も答えた 「あぁ,きつかった。コミュニケーションを取るのにも一苦労だし。上手い具合に違いを見つけられてもそれを判ってもらえるのに時間がかかる」 「…工学部っていってもコミュニケーションが大事だってことだよなぁ」 「始めがきついんだよな,きっと。取り組みが進めばお互いの考えていることも判りやすくなるし…」 「おぉ,それって日本でも一緒だよな。俺,この春関西のヤツと演習組んだときめちゃくちゃ訳分かんなかった。でも1ヶ月経ったら,あうんの仲になったもんな」 「ははっ,お前とコミヤんは特別だよな」
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