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「ユウシの独壇場だったね」
ブライスがこの日初めてじっくりと優志に視線を向けてよこした。優志はどきりとしたが,身体のあちこちにタオルを回して視線を避けた。
「本当だよな。大学で真面目にやってりゃインカレだって出られたんじゃないの?」
「いや…,ユニフォームのセンスが悪いから,インカレだと格好いいのが出てきただけで気持ち負けする」
「あ,俺なんかジェニファー見ただけで戦意喪失だ」
ふざけた話をしながら車に乗り込んだ。遼がいてくれて助かった,と優志は感謝した。
ほんの2分程度でブライスの家に着くと,アセナが2人を歓迎してくれた。汗を流したあと,みなで適当にサンドイッチを作りながら腹ごしらえをした。アセナが講座の様子を聴いてくれて,そして2人の取り組みに感心し心から褒めてくれた。
ブライスの家のローストした肉は,冷たくてもいつもおいしかった。それがブライスの母親の手作りなのだろうと想像がついて,優志はアセナにそう伝えた。
「まぁ,気に入ってくれて嬉しいわ。これはね,スパイスが特別で…」
「お母さん,これからみんなでジェニファーの家に行くんだ。スパイス談義はまたあとで…」
「あら,残念。じゃあ,明日のランチには別のスパイスを使ったおいしいお肉を用意しておくわね」
「ありがとうございます。楽しみにしています」
優志と遼はもう一切れずつサンドイッチをつかみながら,ウィリアムズ家へ向かった。
ウィリアムズ家のビーチには,ジェニファーに連れてきてもらった麻衣子たちがビーチチェアでくつろいでいた。ジェニファーの妹の友だちが数人いて,音楽に合わせて踊っていた。その中にはハーレー家のセアラもいた。
この日でウィンドサーフィンも最後だろうと,優志は今まで世話になったお礼にウィリアムズ家に贈り物を持ってきていた。騎馬上の伊達政宗デザインのTシャツを2枚と兜がデザインされたセンスだった。ささやかではあったが,ウィリアムズ氏がいたく喜んでくれた。
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