第4章 約束

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 優志はベッドの前に立っているブライスに近づいた。目を見つめたまま,ひどく生真面目な顔つきになっているのが自分でもわかった。  ブライスの瞳がきらめいていた。ベッドの反対側にある机のライトが反射していた。グレーの虹彩が柔らかく光を放ち,瞳孔から色素の濃い細い筋が放射状に伸びている。 ―何て綺麗なんだ…。この目をずっと見ていられたら…。 「ブライス,俺,ブライスのことが好きだ。君とずっと一緒にいたい…」 ブライスはぐっと目を見開き,瞳孔が瞬時に開いた。少し頭が後ろに引けた。 それから優志の本意を確かめるかのように,深くその目を見つめ返した。 「…本気だよ,ブライス」 優志の目には何の迷いもためらいもなかった。真実を口にしている,そんな表情だった。それから少し眉間に皺を寄せて口ごもった。 「君にしてしまったこと,申し訳ないと思ってる。本当に何であんな…」 ブライスが優志の唇に軽く手の平を当ててそれ以上の言葉を遮った。手を下ろしながら低く掠れた声で,優しく言った。 「そのことは言わないで」 ブライスは優志の両腕を抱き寄せ,顔を近づけた。 「ユウシ,愛してる。前よりももっと。ずっと君のことを愛してるよ」  ブライスはゆっくりと優志に口づけをした。優志もブライスの両肩に手を回して,唇を押しつけた。互いの息をする音が大きくなりかけて唇が湿り気を帯びてきたとき,ブライスが唇を離した。 「朝までここにいられるのか?」 「ん,その予定。ブライスがよければ…」  嬉しそうに微笑んだブライスは,くるりと優志を回転させてベッドに座らせた。首を少し傾げてベッドに座る優志を眺め,嬉しそうな表情の上にちょっぴり困ったような表情を乗せた。そのまま優志に見入りながら後ずさり,机のライトを消し,壁の調節ツマミで間接照明の明るさを最小限に抑えた。
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