第4章 約束

19/54
前へ
/116ページ
次へ
 優志がシャワーを使い終え,タオルで身体を拭いていると,ドアが低くノックされた。腰にタオルを巻いてドアを開けるとブライスが手に衣類を持って立っていた。茶目っ気のある笑顔だ。 「必要なこともあろうかと思って持ってきてた。ユウシ,使って…」 「何…?」 受け取ると,それは真新しいボクサーパンツとTシャツだった。広げると白地にPrinceton University のロゴマークがあった。 「お土産にもなるだろう?」 笑ってるブライスに,優志は小さく,ありがとう,と言ってドアを閉めた。 ―確信犯だな,ブライス…。 ブライスがシャワーを使っている間,優志はミネラルウォーターを飲んだり,窓からレーニア山を眺めたりしていた。やがて,シャワーの音が止まると,優志は自分が急激に緊張してくるのが分かった。喉の奥に何かがつかえた感じがして,唾を飲み下すことができない。 ドライヤーの音が聞こえ始めた。優志はソファとベッドを見比べ,小さめのベージュのソファに座った。落ち着かない気持ちは変わらなかった。 ―この場から逃げ出したい,って言うんじゃない。これから起こることについて,俺があまり知らないってことが問題なんだ。  ドライヤーの音が止み,ブライスが部屋に戻ってきた。優志がそちらに視線を向けると,ブライスはソファの後ろに回り込み,まだ湿っている優志の髪の毛にキスをした。それから冷蔵庫からミネラル・ウォーターを取り出して半分ほど飲み,窓のカーテンをきっちりと閉めて優志の隣に座った。 「…ユウシ,疲れてない?」  優志が首を左右に振ったのを見て,ブライスはゆっくりと優志を抱きしめた。 「ユウシ,君に言わなきゃならないことがある…」 「え…?」 ブライスはやんわりと優志を抱きしめながら話し始めた…彼の2回の恋愛のことを。
/116ページ

最初のコメントを投稿しよう!

284人が本棚に入れています
本棚に追加