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「じゃあ,これを形にしようか。優志,これからアクセサリーショップに行こう」
付き合っていた女性ともしたことがないような甘い話が形になろうとしている。優志はものすごく恥ずかしい反面,幼いと言えるくらいに恋愛感情をあからさまにできる関係に酔っていた。
ふたりはシアトル市内に戻り,ダウンタウンで大人向けのアクセサリーショップに入った。そこで「心」と「i」をそれぞれにデザインしたペンダントトップをオーダーした。チェーンはプラチナを合わせ,二つで500ドルになったのをふたりで折半した。
仕上がりは翌週の土曜日。優志の帰国の直前にぎりぎりで手に入りそうだった。
ふたりはそのままダウンタウンでカジュアルなレストランに入り,夕食を摂ることにした。
「デートの締めはディナーだ。何にする,優志?」
「…俺,腹減ってる…この150gのステーキとダブルバーガーとチキン&ビーンズサラダにパンケーキのアイスクリーム添え。ああ,米が食べたいなぁ」
「…あぁ,そう…」
運ばれてきた食べ物を豪快に胃袋に収めていく優志に,ブライスは唖然としていた。
「優志,日本では食事はどうしているんだ?自分で作っているのか?」
「ん?俺は実家にいるから,自分で作ることはあんまりないよ。ブライスは料理するの?」
「あぁ,アパート暮らしだからな…。必要最低限は…」
少し考えてからまた口を開いた。
「俺からのリクエストがある。
優志,あと2年で料理ができるようになってほしい。1人で10種類以上料理できれば,ふたりだとそれなりの食生活ができると思わないか?」
口いっぱいにハンバーガーを頬張ったまま,優志が目を見開いて見返している。
―二十歳にもなってリスみたいだなんて,全く心臓に悪い…
「ええと…10種類はハードルが高いか?」
優志はふるふると頭を振って,やっとのことで咀嚼し終わった。すると顔がほんのり色づいた。
「いや,あの,…俺たち2年後に一緒に…住むの?」
―そこか…
「俺の頭の中では,そういうことになってる。
優志,2年後に俺と一緒に住んでくれないかな,このシアトルで」
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