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3つめの坂道を横切って,優志たちはハーレー家の前に着いた。英国風の赤煉瓦造りは周囲の西海岸風の家々とは少し異なっていた。日が暮れかかっていた。優志とブライスは暖かなオレンジ色の光に包まれていた。
「…着いたよ。その,送ってくれてありがとう,ブライス」
優志が生真面目に感謝の言葉を言うと,ブライスはクスッと笑った。
「君と話ができて良かった」
「こちらこそ,楽しかった」
「じゃ,明日11時に迎えに来るよ。ビーチがあるから水着を忘れないで」
ブライスは優志の肩を軽くポンポンと叩いて,にっこり笑い,今来た道を戻って行った。優志には一瞬意味ありげな笑いに見えたが,考えすぎだと思った。僅かに残った夕陽に向かうブライスの後ろ姿から視線を引きはがし,自転車を車庫に入れて家に入った。
今まで多くの外国人と話したことがあったが,ブライスとの会話は今までのものとは何かが違っていた。出会って間もないのに,自分という人間の中心をなす特別な何かを分かち合えた気がした。それに今まで誰にも感じたことがない親密さも感じた。なぜそうなのか不思議だったが,不安には思わなかった。逆に期待が高まるような気さえした。
-あの視線,かな…。複雑な色をした目の-
何に対しての期待なのか,優志にははっきりとは分からなかった。しかし,翌日またブライスに会えると思うと自然に口元がほころんで眠りについた。
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