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そして、彼は私に副会長で良かったと言ってくれた。その表情は心なしか優しかった。
私は今まで、副会長でいてこそ当たり前だと思っていた。
それはきっと私の自意識だけではなく、学園中のほとんどが思っていると思う。
私は少なからず副会長という肩書きに誇りを持っていたのかもしれない…いや、きっと持っていた。
それなのに私は今まで何をしていた?
転入してきた蓮見 瑛太に自分の偽った笑顔を見破ってくれて嬉しかった。そしてキスまでした。
その後、生徒会役員達やいろんな人から瑛太を取られまいと副会長という肩書きさえも忘れて瑛太だけを見ていた。
自分の親衛隊や学園の生徒達の悲しみや怒りなど見えないふりをしながらも。
私は、私を副会長に選んでくれたみんなの意思を裏切った。もう絶望、失望してるかもしれない。
それでも……!!
私はまだ副会長という肩書きを背負っている。
私は走った。
走っている途中に、ちらほらといた生徒達が私を見てどうやら驚きを隠せないようだった。
こんな一生懸命になるのはいつぶりでしょうか?
だけど今はただ目指していた。あの溜め込んでいた大量の書類が置いてあるであろう生徒会室をーーー
もう間に合わないかもしれない…だけど、私には副会長としての務めがあります!!
私はきっと今でも瑛太のことは好きだ。私の本心を見てくれた人。
でもそれはきっと恋心とは違う。瑛太と居ると穏やかな気持ちになり、まるでぬるま湯に浸かっている気分だった。それはそれで幸せだったのかもしれない。
でも私は知ってしまった。
彼という存在を。
彼と一緒に居ると、頭が真っ白になる。胸が張り裂けそうになるほど痛くなる。自分自身が冷静になることができない。苦しかった。
でも、それでも誰よりも彼に私という存在を認めて欲しい。
あの、私の目を覚ましてくれた彼を。
それに彼は私に笑顔をその笑顔を浮かべなくていいとどこか、挑発するような冷笑的な笑みを浮かべてきた。
きっと、私が作り笑顔をしていたことに気づいていたんですね…それで、そんな作り笑顔ではなく本当の笑顔見せてみろ…そういうことなんですね!!
彼にはもうきっと作り笑いなんてできない。正直な気持ちで生きていきます。
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