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吉良雅(きら みやび)は、まさに神に愛されし美貌を持っていた。
美しいブロンドの髪、そしてその髪によく似合った碧色の瞳、もう顔の形作るものが全て美しく、まるでお伽話に出てくる王子様を思い出させられた。
しかし彼は重度なナルシストだった。
もはや自分にしか興味が見い出せないのか毎日、授業中も休み時間も人と話す時でさえ鏡を見ていた。
現に先程吉良に話し掛けた少年のように、自分の容姿に自信を持っている者達が次々と自分なら見てくれるだろうと吉良の前に現れた。
だが、鏡から目線を外すことはなく、プライドが粉々になっていく者が増える一方であった。
「相変わらず吉良のナルシストぶりはすごいな…」
「なに言ってるの!そりゃあ、あんだけの美貌を持ってればああなるよ!僕も吉良様のお顔をずっと眺めていたいし…でもこの頃吉良様憂いを帯びた顔してる時があるんだよね……」
「はぁ!?あれでか!?どう考えてもうざいほど元気だろうが!どうせ悩みったって自分の美しさが罪…的なやつだろ。」
クラスメートは思わず吉良を見た。あの吉良が悩みを持つなんて到底信じられないことだった。
「僕も最初はそう思ったんだけどね、うーんなんかそれとは違うんだよね…たまになんだけどうっとりしていて酔った感じの表情になるときがあるんだよね…まるで恋みたいな?」
「それっていつもじゃね?」
「それもそうだね。」
クラスメートにはあのナルシスト王子の思考を考えること自体間違いだったと、考えることをやめた。
「そういえば、どんな人が転入して来たの?」
「俺は見てないんだけどなD組の田中が見たらしいんだってよ。あいつまるで悪魔にでも追われてたのかっていうぐらい青ざめた顔でやばいものをみた…って言ってるらしいんだよ。」
そう話す彼の顔も何処か少し青ざめていて、みんなおもわず固唾を飲んだ…
「や、やばいものってなんだよ?」
「なんか、見た目は黒髪オールバックで一度見たら夢にまで、出てきて魘されそうな顔で、あまりの恐ろしさに思わずその場を逃げ出して…」
突然椅子が倒れる音が教室中に響き渡った。
「うおっ!?」
「ギャアアア!!」
いきなり椅子が倒れた音にクラスメートは思わず悲鳴をあげた。
「ちょっと誰よっ!!こんな時にびっくりさせて………って吉良様!?」
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