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だから俺には笑顔はいい。
あぁ、本当に榊みたいな心優しい人に会えてよかった。あれ、これってもしや友達への第一歩じゃないのか?
胸がじーんと熱くなるのを感じた。
「……ちら……しく…ます。」
感動の余韻に浸っていると、榊が急に下を俯いたまま何かを呟いた。
なんて言ったんだ?
「あ?なんだ?」
聞こえなかった言葉を聞き返そうとしたら、榊の肩がびくりと跳ねた。
しまった。
思わず強い口調になってしまったことを後悔したが、もう手遅れだ。
「こ、こちらこそよろしくお願いしますぅぅぅ!!!」
そう言いながら榊は今来た廊下をすごい勢いで走り去ってしまった…
俺は今までこれほどまでに自分のコミュニケーションの無さを呪ったことはなかった。
くっ……絡まれる不良を追い払う為に身に付けたドスがここで発揮されるなんてっ…
そりゃ怖いぜ……俺
やはり、榊は無理してたんだな…。
こんな顔面凶器の名を欲しいままにする俺に気を遣って優しくしてくれて、あまつさえ引きつりながら、笑顔を見せてくれたすごくいい人だった。
最後の最後まで気を遣わせて悪かったな榊、少しだけだったけど嬉しかった、ありがとな。
俺は理事長の扉をノックした。
心が折れて憔悴しきっていたため俺は知らなかった。
榊が耳のあたりまで顔を赤らめていたことを。
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