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苦しいほどに高鳴る心臓の音に榊は悩まされていた。
その原因は、あの今日来た転入生だった。
私は初め会長から転入生を出迎えろと言われた時正直嫌だった。
それは、私の可愛い可愛い思い人、蓮見瑛太(はすみえいた)との時間が少しでも減るからだった。
だから適当に、作り笑いでも浮かべて早く終わらせようとした。
どうせ、作り笑いなんてわかる人なんて瑛太しかいませんし。
そして、彼の姿を初めて見た時は、心臓を握り潰されるほどの恐怖を感じた。
目を合わせた時ぞくりと背中に嫌なものが走った。
顔を合わせられない。
逃げだしたい。
そんな思いを抱えていた。
だけど、プライドがそれを許さなかった。
この恐ろしい男に笑顔で対応してやる。なぜだかこのような考えが浮かんだ。今思えば恐怖のあまり頭がおかしくなったのでしょう。
そして私は、笑顔を作った。
「凰堂学園へようこそ。私は案内を任された副会長の榊和臣です。よろしくお願いします。」
上辺の笑顔に上辺の言葉をのせて。
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