退魔師系高校生

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黒岩は瞑の肩をポンッと叩きながら微笑む。 「今日からこのクラスの仲間になった柄沢瞑だ。みんな、よろしく頼む。ぞれじゃ、柄沢、早速自己紹介を頼む」   黒岩に言われた瞑はと満面の笑みを浮かべながら言う。 「柄沢瞑でーす」 「……終わりか?」 「んじゃ、よろしくお願いしまーす」   この簡潔な自己紹介に黒岩だけでなく、クラスの生徒も頬を引き攣らせた。 しかし、瞑はこの空気感がわかっておらず、不思議そうに首を傾げる。 黒岩もこれ以上求めてもしょうがないと思い、コホンと咳払いすると瞑を自分の席へと案内した。 「柄沢の席は右端の一番奥だ」 「はーい」 気の抜けるような返事をした後、瞑はスタスタと教室の奥へと進む。   席に座って早々、瞑は「よろしくね」と隣の生徒に挨拶をした。 彼の隣の席は短髪の男子生徒だった。 腕まくりした腕は線が細いが、部活動で鍛えた筋肉がしっかりとついている。 華奢な瞑と比べるとガタイのいい体格だが、持ち前の目元は大きく、爽やかな印象を与える。 「君、名前は?」 「千倉燿(ちくらよう)だよ。よろしく」 燿は目を細めながら、瞑に一礼した。 「燿か。俺、柄沢瞑!」 「知ってるよ、今言ってただろ」 「あ、そっか」  頭を掻く瞑に向け、燿は声を出して陽気に笑う。 「柄沢、千倉。自己紹介はいいがホームルームの後でな」 私語をする彼らに黒岩は苦言する。 「すいませーん」 瞑も燿も声を揃えて謝る。 だが、燿が正面を向いた頃には先ほどまでの笑顔が一瞬にして消えていた。 こいつ、いきなり下の名前で呼び捨てかよ。   そんな彼の真っ黒い本心は、瞑おろか黒岩や他のクラスメイトですら気づいていない。   そもそも燿は瞑のことなんて少しも関心を持っていなかった。 転校生がいようがいまいが、この退屈な日々は変わらない。 面倒事に巻き込まれないようにこうして八方美人に振舞って、目立たないように学校生活を送る。これまで通りの日常を過ごすのだ。 少なくとも、この時までは燿はそう思っていた。 だが、日常というのはほんの些細なことでも一変する。 彼らはそのことに気づいていない。 燿も流花も、そして、瞑自身でさえも――……。
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