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統吾の言葉に悟も瞑も「え?」と声をあげる。
「どういうことだよ統吾……あいつ、視えたんじゃなかったのか?」
「え? 何言ってるの兄ちゃん……あの人、どう見ても視えてなかったでしょ」
瞑の証言に悟は「あ?」と眉をひそめる。
このやり取りだけで状況は一世にも十分伝わったようで「なるほど」と小さく頷いた。
「さとりんは彼女と全然接していないからそう思うのも無理はないんです。彼女の口ぶりだけだったら霊感があるように見えてしまう。それくらい彼女ははっきり言っていたんですから」
けれども、実際彼女は自分に男が憑いていることも、逆に流花に何も憑いていないことにも気づいていなかった。
霊媒体質なのにそれがわからないとなると、彼女にはそういった力がないということになる。
「彼女は『視えざる者の存在証明をする』と言っていました。あれって……誰にするつもりだったのかなって思うんです」
統吾は彼女がとても哀れに見えた。
哀れだったからこそこんなにも同情しているし、放っておけなかった。
彼女のやろうとしていることが、とても虚しいことだとわかっていたから。
「あの人……一番は自分自身に証明をしたかったんですよ。『自分には、ちゃんと幽霊が視える』って……」
だが、実際のところは彼女に霊力は殆どないし、瞑の力で一瞬だけでも視えたとしても、恐怖が具現化したものでしかない。
彼女が抱いていた世界とは程遠い。
「俺……わかんなくなっちゃいました。視えるってーー一体どうやって証明すればいいんでしょう」
俯く統吾に悟も瞑も何も言えなかった。
彼らもまた、自分がどうやって視えているのかを証明できなかったからだ。
だが、そんな黙りこくる彼らを見て、一世はクスリと笑った。
「統吾君は……どうして私たちも君と同じ体質だとわかったのですか?」
突然の問いに統吾は「え?」と驚く。
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