2055年

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目を覚ました小林正人は、携帯で朝の9時過ぎだということを確認すると体を起こす。休みの日でもいつもなら7時半には起こされるのだが、何故か起こされなかった。昨日は寝るのが遅かったから助かるのだが、少し気味が悪い。 しかし、正人は棚の上に飾ってある額縁に入った写真を眺めると、先ほどの気持ちはすぐにどこかへ去っていく。 『中学生バスケットボール大会・春:優勝』 中央にはトロフィーを手にしている正人が映っている。 今から2週間前のことだ。中心はおかしいだろう、という訴える正人を無視して、みんなは正人を中央に押し込んで写真を撮っていくれた。恥ずかしい気持ちもあったが、嬉しい気持ちの方が大きかった。 そういえば、とベッドから立ち上がると正人は思い出す。 「俺がメール受け取ったの、ちょうど25年前だったか」 自分が受け取った”未来メール”のことを思い出し、全然プロの才能なんかなかったじゃないか、と苦笑する。 「この大嘘付きめ」と呟いて、生徒と共に映っている写真をもう一度眺めた。 部活の顧問になって15年。ようやく優勝まで導くことが出来た。 あの時、諦めなくて良かったな。手術受けて良かったな、と正人は自分の足首を見ると微笑んだ。 「大丈夫、上手くいくはず」 正人は自分に言い聞かせるとリビングへ向う。
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