2055年

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「あ、やっと起きた?」 正人がリビングの扉を開けると妻の依子がにやにやしながら、声を掛けてきた。 起こされなかったことを思い出し、警戒する。 「ああ、……おはよう」 「おはよう。今からごはん作るね」 「そういえば、美紀は?」 食事の支度をしている依子を見ずに、正人は声を掛ける。なるべく興味にないよう装った。 「出かけたわよ」 「え?」思わず依子の方へ振り向くと、依子はにやっと笑い口を開く。 「練習。行ったわ」 依子が食事を持ってくる。ウインナーにスクランブルエッグ、それは正人が好きな朝のメニューだった。機嫌がいいらしい。 いただきます、と正人が食事を取り始めると、向かいの席に依子が座る。相変わらずにやにやしている。 「ねえ、美紀に変なメールが来たらしいよ」 「……は?」おいおい、ちゃんと誰にも言うなって書いたはずだ。 「なんか未来の自分からきたらしいわよ」と言うと、くくっと笑いだし、次第に我慢しきれなくなったのか、声を上げて笑う。 「バレバレだったわよ。私もすぐわかったわ」 「何で!?」恥ずかしい。 「漢字」 「え?」 「”機会”がロボットの”機械”になってたわよ」 まじかよ、やっぱりだめじゃないかよ親父、何が「そんなこと大丈夫だ」だ、と正人は首を垂れる。やはりちゃんと確認するべきだった。
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