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「あ、やっと起きた?」
正人がリビングの扉を開けると妻の依子がにやにやしながら、声を掛けてきた。
起こされなかったことを思い出し、警戒する。
「ああ、……おはよう」
「おはよう。今からごはん作るね」
「そういえば、美紀は?」
食事の支度をしている依子を見ずに、正人は声を掛ける。なるべく興味にないよう装った。
「出かけたわよ」
「え?」思わず依子の方へ振り向くと、依子はにやっと笑い口を開く。
「練習。行ったわ」
依子が食事を持ってくる。ウインナーにスクランブルエッグ、それは正人が好きな朝のメニューだった。機嫌がいいらしい。
いただきます、と正人が食事を取り始めると、向かいの席に依子が座る。相変わらずにやにやしている。
「ねえ、美紀に変なメールが来たらしいよ」
「……は?」おいおい、ちゃんと誰にも言うなって書いたはずだ。
「なんか未来の自分からきたらしいわよ」と言うと、くくっと笑いだし、次第に我慢しきれなくなったのか、声を上げて笑う。
「バレバレだったわよ。私もすぐわかったわ」
「何で!?」恥ずかしい。
「漢字」
「え?」
「”機会”がロボットの”機械”になってたわよ」
まじかよ、やっぱりだめじゃないかよ親父、何が「そんなこと大丈夫だ」だ、と正人は首を垂れる。やはりちゃんと確認するべきだった。
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