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「ご飯食べたら、美紀の練習姿、ちょっと覗きに行きましょう?」
「見つかったら怒られるぞ」
「大丈夫よ。見つからないし、見つかっても今日なら大丈夫なんじゃない?」
「そうか?」それとこれとはべつな気がするが、なんせ今年で15歳になる娘は思春期ど真ん中で、非常に難しいことは、中学教師である正人には痛いほどわかっていた。
美紀が5歳から始めたフィギアスケートは、美紀の自尊心の基となるものだった。基となるものだったからこそ、その挫折は美紀をひどく苦しめた。そして苦しめた際に出した答えは”やめる”ことだった。その美紀の気持ちも正人には痛いほどよくわかる。
良く分かるからこそ、正人は自分の父、和人が行った”未来メール”を使ってみることにした。
”未来メール”と言っても本当はただ送り主の名前を自由に書き換えるいたずらアプリなのだが。それでも自分には十分過ぎるほど効果大で、あっけなく騙された。まぁ娘は自分とは違い騙されなかったわけだが、結果オーライとしよう、そんなことを考えていると正人携帯にメールが届く。
「……美紀か」と件名を見ると正人はえっ?と声に出してしまう。
件名:1000年前の自分へ
「あいつ……」
From:小林美紀
TO:小林正人
件名:1000年前の自分へ
国語の勉強をするように!!!
PS
ばーか。
「依子、早く見に行くぞ」と正人は食器を片付ける。
こうなったら堂々と見に行こう、娘の未来を見に行こう、と正人は着替えるためにリビングの扉を開いた。
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