2030年

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「おい、もっと早くボール回せ!!」 体育館では、部員の声とドリブル音が鳴り響いている。一年生も入部し、いつも以上に士気が上がっているように思える。時折聞こえるバッシュのキュッキュッ、という音が小林正人の気分を落ち込ませた。 「おい、病院行かなくていいのかよ」と山中太一が松葉杖姿の正人を見つけ、声をかけてきた。なんでお前が部長になっているんだよ、と正人は心の中で呟く。 「ああ、もういいんだ」 嘘だった。今日も病院に行く必要がある。 「そうか。早く良くなるといいな。夏の大会には……」と太一が全てを言い終える前に正人は体育館の出口へ向かう。やっぱり来るんじゃなかったな、と正人は後悔した。そのまま正人は振り返ることなく体育館を後にした。 正人が怪我を負ったのは2週間前の試合の時だ。強豪相手で、尚且つ、正人と同じく選抜に選ばれていた選手がいたこともあり、正人は必要以上に力が入り、強引なプレーが増えていた。 正人は相手コートで、パスをもらうと、無理やり中へ切り込み、ゴール下からシュートを放つ。ディフェンスにぶつかりながらも見事シュートを決めるが、正人は着地の時に、相手の靴を踏んでしまうと、右足首ひねり、その場に倒れこんだ。 一瞬激しい痛みを感じた正人だったが、すぐに治まると、なんだ大丈夫じゃん、良かった、と立ち上がろうとした。が右足首に力が全く入らなかった正人は、またその場に倒れこんだ。 一度ベンチに下がったが、そのままコートに戻ることはなく、試合が終わると、そのままタクシーで病院へと運ばれた。 試合は20点差で負けだった。 そして正人はそのまま中学3年生になった。 残りの公式戦は夏の大会のみだ。
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