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いつの間にか寝ていた正人は、ノックの音で眼が覚める。
「入るぞ」と太い声がしたかと思えば、正人の返事を待たずに、扉は開けられた。正人が体を起こすと目の前には父親の小林和人が立っていた。
「病院行かなかったらしいな」和人はベットに腰掛け、正人を見ずに話し掛ける。
「ああ」父親が自分の方を向いていないおかげか、正人は幾分話しやすかった。
「で、どうする?バスケやめるのか」
「たぶん」
「……そうか。もったいないな。才能、あったのに」
「そんなもんねーよ」
「選抜にも選ばれたじゃないか」
「選ばれただけだよ」
「選ばれなかったやつよりかは才能があったし、練習もしてきた。そうじゃないのか」
「そんなの才能とは言わない」
「才能とは言わないか……。なら、まだこれからなんじゃないのか?」
和人は正人の顔を見るが、正人は俯いたままだった。
「その、これらからが無くなったんだよ」
「無くなった?無くそうとしているだけじゃないのか?」
「うるせーよ!!」
正人は和人の方へ顔を振り向きながら叫んだ。
「俺の勝手じゃねーか!!!!」
出ていけ!と正人は叫び和人を部屋から追い出した。
うるせえよ、と小さく口に出すと、涙がこぼれた。
涙はしばらく止まらなかった。
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