第1章   真琴

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今夜どうする? 口元に笑みを浮かべた響先生の耳に残る低音は、非常に腰にくる へなへな 床にへたり込むぼく 「生まれたての小鹿だな」 眉を上げた響先生の目が、笑ってる 「手を貸そうか? 張り詰めたマコが楽になれるように」 ズキュン 指でぼくの股間を打つ真似をした響先生 パチン ウィンクをして、冷蔵庫に向かってしまう 本気? それとも冗談? 判断のつかない響先生の「飲むか」手にはペットボトル 「ううん」 首を振ったぼくは カチッ 開けた蓋をゴミ箱へ投げ入れ、凄い勢いで飲み干す響先生の首を見つめた 「泊まったらするの? ぼくと、アレ」 汗と混ざった水滴がのどを落ちていく 動くのど仏 上下する厚い胸板 ・・・・・・・・・誰? 響先生と誰かの姿がスッと重なった 『マコ』 低く響く誰かの声 「いや、楽にしてやるだけ 友樹がどう言ったかは知らねえが、昔とは違う マコの心が俺にないなら、抱かねぇよ」 ぐいっ 濡れた口元を腕で拭った彼の瞳に映る、お酒に酔ったような顔をしたぼく 声が違う 『好きだ、マコ』 胸を焦がすあの声じゃない人に「望めば、楽にしてくれる?」手を伸ばす 「ああ。任せろ」 ぼくの手を握り返す手の力強さに泣いてしまいそう この手と同じ手を知ってる 大きくて、ゴツゴツした響先生の手に、本能の命じるままに唇を寄せた
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