プロローグ  圭介

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警察組織に異分子は許されない ゲイ? 女装家? レズ? 個人の性癖が上層部にバレたら、出世は夢のまた夢 「と言うわけで、アンタはゲイ、私はレズであることを隠すため暫く恋人ごと騙す覚悟でいてね」 スポッ 短髪を誤魔化すための、ショートへアのカツラを被った先輩刑事 田村美由紀の細めた目を見返し 「無理です」 はっきりと拒絶した 警察官は俺の夢 だが、自分の夢を叶えるためだけのために、マコを悲しませることはしたくない 「先輩命令よ。縦社会で先輩に逆らう意味、分かってるよね」 ・・・・・・・・・・・・ッ、糞 ご勝手に 言いたげな眼差しを向けてくる女に、何も答えられない 「私って、期待されてんの。先輩たちにさ」 分かってます 射撃訓練でも、上位に君臨する水原警部以外の婦警の多くは、お粗末としか言いようがない 圧倒的に足りない筋力 パン 撃った反動で両腕どころか、上半身までブレている それでも、凶悪犯罪の増えた昨今 婦警も拳銃を所持する機会も多くなるというのに、男女平等を訴える裏で女だからと甘え筋力を鍛えない 「そこら辺の男に負けない自信がある。そう言い切れるよう努力してきたんだ、レズってことだけで弾かれたくない」 「お気持ちは分かりますが」 「分かってない」 声を荒げることのない冷徹な眼は、尊敬する水原警部を彷彿とさせる 「恋人には言わせて下さい」 「無理。浸透するまで油断できないからね」 「いつまで掛かりますか」 「そうだね」 口端を上げた田村先輩の「一年あれば充分だ」提案は、気の遠くなりそうなほど絶望的な期間だった
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