「冷たさ」フミコフミオ

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「冷たさ」フミコフミオ

「冷たさ」フミコフミオ  怪人「レッドマン」が近所の公園のベンチに座っているのを見つけたときに吹きすさんでいた秋風の冷たさを三十年経った今でも俺は完璧に覚えている。  当時小学生だった俺は、全身をテカテカした赤い布で覆った「レッドマン」の異様な出で立ちより、錆び付いた公園のベンチに座っている奴の哀愁が気になって仕方なかった。風の冷たさも奴の哀愁に拍車をかけていた。レッドマンは話題の中心だった。「返り血を浴びた殺人鬼」「宇宙人」「怪人」「赤い彗星のシャア」といったトンデモから、「キチガイ」「変態」「無職の暇つぶし」といった現実的なものまで、奴の正体についてのくだらない憶測が池に浮いてくる泡のように浮かんできては、次の日には弾け飛んでいた。 (続く)
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