それは突然やってきた

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セミの鳴き声がうざいくらいに響く。 もはやうるさいというレベルを飛び越えてなんと表現していいか分からない。 外に出ようものなら、汗が吹き出し、シャツは一瞬で濡れてしまう。 それくらい暑い夏だった。 大学進学に伴い、俺は地元大阪を出て、静岡県で1人暮らしをしていた。 そんな大学1年生の夏。 バイトをするわけでも、課題をするわけでも、ましてや、彼女なんていない俺は、ただこの夏休みをダラダラと過ごしていた。 毎日、昼頃まで寝て、ご飯を食べて、冷房の効いた部屋で寝転びながらゲームを朝方までし、また昼頃まで寝る。 そんな生活をしていた。 目標なんてない。 ただ、まだ就職して働きたくなかった。 だから俺はそこそこに勉強をし、そこそこのレベルの大学に進学した。 これで、4年間は働かなくてもすむ。 大学なんて、ただ4年をダラダラするためだけに来たようなものだ。 シャワーでも浴びるか。汗が気持ち悪い。 そんなことを思った時、携帯が鳴った。 「誰だよ。」 携帯の画面を確認すると [島村柚](しまむらゆず) という名前が表示されていた。 「もしもし…。」 「あー!てっちゃんやっと出た!」 てっちゃんとは俺、中崎哲也(なかざきてつや)のこと。 柚とは幼稚園から大学まで同じ。 そう、いわゆる幼馴染というやつだ。 「で、柚、何の用?」 「あのねー、ちょっとうちの家に来て欲しいんだけど今、大丈夫??」 「ん、ああ、大丈夫だ。」 シャワーを浴びてから行くということを伝えて電話を切る。 俺の住んでいるマンションから柚のマンションまで自転車で10分くらいの距離。 はあ、この暑いのに。 俺はシャワーをさっさと済まして、部屋を出た。
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