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…速いっ
男は彼女の動きの速さに驚いた。
彼女の動きを目で追うのが精一杯で、避けようと思っても身体がついてこない。
男の懐に潜り込んだ蛍は、手の中でクルリと刀を回し、逆手で持った刀の柄頭で男の鳩尾を突く。
そして痛みから背を丸めた男の頭を掴み、顔面に膝をめり込ませる。
顔面を抑え、たまらず膝をついた男に、蛍はとどめとばかりに蹴りを入れた。
男が意識を無くしたのを見届け、最後の1人は?と振り返るとそこには仲間を置き去りに逃げる男の背中があった。
蛍は持っていた刀の鞘を拾い上げ刀を収めると、それを逃げている男目掛けて投げた。
その刀は男の頭に直撃。打ち所が悪かったのかそのまま倒れ込み、気絶した。
「はーい、私の勝ちー。」
手をパンパンを叩きながら、さも当然のように蛍は呟く。
息も乱すことなく、緩みきった雰囲気を纏って。
鋭い眼光の彼女など見る影もなかった。
「寒い!」
集中力が切れた途端、忘れていた寒さが襲ってきた。
これ貰おうっと。
蛍が目をつけのは気絶した男の着物。
寒さの緩和が第一優先事項のため、蛍は何のためらいもなく着物に手をかけた。
袴の着方が分からなかったために、1人から着物を剥ぎ取り、それを着ながらもう1人の着物の着方をみたり、紐を解いたりして見よう見真似で着る。
男たちが気絶していることをいいことに、やりたい放題だ。
「これでよし。」
意外と上手く着れたことに蛍は満足げに頷く。
元々着ていた服の上から着たこともあって、ポカポカと温かい。
その温かさに自然と顔が緩んだ。
裸足だったため草履も拝借。
ついでにカッコいいからと腰の二刀も貰う。
準備の整った蛍は竹藪の中から出るために、足を踏み出した。
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