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力石。
重さが1トンを超える巨石である。
大の大人が数人がかりでも持ち上げることはかなわない。神が宿る石とも称されている。
平兵衛はずっとこれを持ち上げることを目標に、激しい鍛錬をしていた。その方法は単純明解。
朝から晩まで、全力でただ力石に挑み持ち上げる。それ以外には何もない。
食べて寝て、力石に挑む。
そんな生活を十数年続けている。
それだけで、平兵衛の体は鋼鉄の様に、研ぎ澄まされていった。
笑っていた村人も、今は誰も平兵衛を笑わない。力石に挑む彼に、拝む人さえいるほどだ。
ある村人が、なぜ力石に挑むのか、平兵衛に問いかけたことがある。
平兵衛は答えた。
「これ以上の冒険が他にあるのか」と。
今日も平兵衛は力石に挑む。
それが持ち上がった時、平兵衛が次にどんな冒険に挑むかは、誰にもわからない。
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