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「はー助かった。ありがとうね」
とりあえず事情を聞き出すことから始めないとと思い、ある程度静かなところへ連れて行った。
「それで、何があったんだ。ナンパにでもあったのか?」
あの状況から探りを入れてみる。男が数人囲うようにいたあたりそういうことなのだろう。
「んーまぁそんな感じ? ああいうのってどこにでもいてどこにでも声かけてくるから嫌なのよね」
そういってペロリと舌を出す。……なるほど。色々と大変なのだなと思う。
「お前……まぁいいけど、あんまり目立った行動するなよ。今回みたいな目にあっても知らねーからな」
なんてらしくないことを言ってしまった。俺らしくない、気があるような台詞だった。
「あ、心配してくれてるの? 見た目に反して優しいんだね。そういう人、嫌いじゃないよ」
そう言って格ゲーの台に入っていく。……もうどうしたらいいのかわからない。
「……えっ、えっ? お前らそんなに話すだけの付き合いあったの? 俺知らなかったんだけど」
「何もねーよ。ただ……なんだ、放っておけねーんだよ」
……本当に我ながららしくないことを言っている自覚はある。こんな感情はあれ以来だ。あの時の――――。
そんなこんなで格ゲーの台から帰ってくるまで光輝と話し続けた。あーでもない、こーでもない。特に面白いことは話していなかったと思う。ただ、あの時の記憶が頭から抜けなかったのも事実だ。
「ふー楽しかった。ね、次は何する? シューティング? レース? なんでもいいよ。特別に相手してあげる」
そう言って意気揚々と歩いて行く星川に俺達はついていくしかなかった。連れでもないのに何をやってるんだ俺達は。とにかくあいつの姿にたじたじだったことしか覚えていない。何の気なしにゲーセンに寄ったらまさかこんなことになるとは……。
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