渦巻く思い

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無言で静かに、携帯のディスプレイに目をやる蒼空の片側の眉が上がる…。 『 くっ―― 』 俺は、自分の下唇を噛んで俯く。 〝 糞ババァ 〟蒼空の目には、その文字が見えているはずだ……。 『 これ、お前のお母さん…?『 うん… 』んで、よっぽど出たくねー訳があるんだよな…?!『 うん… 』分かった 』 蒼空の問いかけに〝 うん 〟しか言えなかった。情けなくて下唇を噛む力が強くなる! 『 もしもし… 』『 つっ―、蒼空!何、勝手に出てんだぁ?!切れよーー!!! 』 予想もしてなかった事にパニクる俺…… 蒼空が何も考えないで行動しないのを知っている竜は、俺の口を手で塞ぎながら、、後ろから体を押さえつけて来た。 『 ふご……っはなせーー 』手で塞がれていて声が届かね~。 蒼空は俺を見る事をしないで、携帯の相手に耳を澄ます。 「 遥斗!高校入学したんでしょ?おめでとうって伝えたくて電話したの……もしもし、聞いてる遥斗?? 」 『 すみませんが、遥斗は電話に出ません。理由は、分かりません。でも、遥斗があなたの電話に出たくないと言っているから、俺は遥斗の気持ちを大事にしてやりたい!今日はこのまま切って頂けませんか? 』 蒼空?!…… いつもと違う丁寧な喋り方の中で聞こえた言葉が頭をグルグル回る――。 「 貴方は誰?遥斗が出たくないって言ってるのは本当なの?! 」 俺には糞ババアの声は聞こえない…聞こえたくもないけど…。 でも、また蒼空が答えたので何か言ったのだと分かる。
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