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僕はもう中学生だけど、毎日、小学校へ妹のひなたを迎えに行く。
ひなたは3年生になるけど、1人で家に帰る事が出来ない。
1人だと校門を出た所から足が動かないのだ。
僕は駆け足でひなたの小学校まで走る。
ひなたは僕を見ると笑顔で手を振るけど、帰り道だんだん笑顔が萎んで行く。
大丈夫だよ、と言っても大丈夫じゃない事は2人とも知っている。
代わりに僕は「頭は痛くない?」と聞く。
頭は髪の毛があって見えないから、アイツはそこを狙って固い物を投げ付けてくる。
「痛い…。お兄ちゃん、背中は?」
僕がひなたに覆いかぶさるとちょうど狙いやすくなるし、服で隠れて見えないのでアイツが蹴るのに都合が良いのだ。
「痛くないよ」
亀の甲羅のように腫れて下着に擦られるのが痛かったけど、僕はそう答えた。
途中、公園に寄って、ひなたがブランコで遊ぶのを安全柵に寄りかかって眺める。
ポケットから携帯電話を取り出す。
お母さんが消える前に買ってくれたものだ。
契約は更新されなかった。
もう誰とも繋がらない。
カメラと時計だけだ。
からっぽのアドレス。
からっぽのフォルダ。
全部アイツが消した。
「お兄ちゃーん」
ブランコを揺らしながら笑顔で手を振るひなた。
「両手で持たないと危ないよ」
注意されているのにまだ嬉しそうに手を振っている。
「さあ、もう帰らないといけないよ」
ひなたの笑顔が萎むのを見ると、僕の胸も萎む。
それでも手を繋いで帰るしかない。
ひなたは言う事を聞いて、ブランコを降りてとぼとぼと歩いて来た。
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