からっぽの僕の心に

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次の日、公園でブランコに乗ったひなたを見ていると、ふいに電話の着信音が鳴って消えた。 昨日の攻撃が当たって故障してしまったのかと取り出すと、来るはずのないメールのマークが点滅している。 『君は岩崎ひかる君だよね?』 開いたメールには僕の名前が書かれていた。 アドレスは空欄だ。 『そうだけど』 契約の切れた携帯電話。 届くはずもないので遊び心で返信してみた。 『よかった。僕も岩崎ひかる。20年後の君だよ』 届くはずのないメールが相手に届き、来るはずのない返事が来る。 アンテナを確認すると、いつも通り圏外の表示。 悪戯や迷惑メールと言われた方が逆に嘘だと思ったかもしれない。 常識ではありえないメールの相手は、常識ではありえない相手であると言われた方が納得してしまう。 でもやっぱり常識が僕の理解の邪魔をする。 次のメールが届くと、そこには僕しか知らない事がたくさん書かれていた。 不思議と常識の折り合いがついてきた。 大人みたいに不思議に対して意固地で居続けるわけにもいかなくなってきたぞ。 考えていると、また次のメールが届く。 『君の所には、ひかるが居るだろう?写真を撮って送って欲しいんだ』 写真?写真なら自分で撮れば良いのに…。 あ、もう大人だから、子供のひかるが見たいって事かな? 「ひなた」 まだ帰る時間じゃないと分かっているので、名前を呼ばれて嬉しそうにブランコを飛び降りて駆け寄ってくる。 「写真を撮るよ」 無邪気な笑顔でポーズをとるひなた。 その姿を見て僕も楽しくなる。 ひなたはいつも笑顔をくれる。 写真を撮って送った後も、もっと撮ってとひなたがせがむのでまた何枚か撮り、その度に返信を使って写真を送った。 しばらく経った後、お礼のメールが届いた。 『ありがとう。本当にありがとう』 なんだか泣きそうな文字だな、と何故か思った。
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