からっぽの僕の心に

6/7
前へ
/7ページ
次へ
僕からのメールを思い出した。 『…大切なものを無くしてしまう事になるんだよ』 僕の大切なものは何だ? ひなただ。 ひなたを無くしたくない。 そんな日が来るなんて想像したくない。 アイツはピタと動きを止め、こちらを睨んで何か怒鳴り始めた。 もう一度声を出そうとしたけど、喉が詰まって声が出ない。 ぶるぶる震えてからっぽの心が紙袋みたいにぐしゃぐしゃ握り潰される。 こんな事はするべきじゃなかったんだ。 僕は他の誰よりも臆病で勇気がないのだから、逆らう事なんて出来るわけがなかった。 屈服した僕を見て満足げに笑い、アイツは僕に興味を無くしてひなたに向かう。 「やめろって言ってるだろー!!」 気付くと僕は、アイツに体当たりをしていた。 僕の目の前でアイツが、みっともない格好で地べたに倒れている。 あれ?夢? その証拠に頭がボーっとして腕も足もじんじんして音もふわふわしてまるで現実味がない。 なにコイツ?なんで倒れてんの?格好わる。 ソイツはやおら立ち上がり、腕を振り上げ反動を付けて僕に拳を振り下ろした。 左の頬と眼球に激痛が走り、後頭部も痛いと思ったら、今度は僕が倒れていたのだ。 顔の中からゴンゴン音がして、僕が更に殴られている事が分かった。 何度も何度も顔を殴られて、もう何が何だかどことどこが痛いのか分からなくなって。 何も考えられなくなった。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加