臆病者は窓を切る

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 唐突だが、僕は臆病者である。  ついでを言うと、ヘタレで怠け者である。  だから世界を旅したり、日本一周で野宿上等なんて大冒険は、憧れだけで止まっている。  そんな僕は少し出掛けては、シャッターを切る。  普段何気ない路地裏も、家屋も、動物も。  レンズ越しに切り取れば、見え方や視線、大きささえも少し違って見える。  人の目は優秀すぎるから、見たまま感じたままが、他人と同じように映るとは限らない。切り取ったモノが同じものとは限らない。  でも、違うからこそ僕は、レンズ越しに世界を見る。  違うからこそ、好奇心が湧く。  怖がる面倒くさがる僕自身を差し置いて、その好奇心は足を止めて窓枠の世界に入ろうとする。  臆病者の僕に大冒険なんて出来ないだろう。  でも、身一つと、ちょっとの好奇心で、 カメラ片手に小さな冒険へ出掛けることくらいは出来るのだ。
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