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「―――おう、そろそろ起きろトド」
「…………。」
寝起き一発目から失礼な冗談ぶち込んできやがる。
目覚めが悪いったらありゃしない。
「麗しき乙女に向かってどの口がトドとか言ってんだコラ」
「でかいイビキかいて寝てたからトドかと思った」
「トドっていびきかくの?」
「知らねぇ」
「適当だなオイ」
正直、この軽快なやりとりは嫌いじゃない。
寝起きじゃなければもっとキレのある返しが出来たのに、なんて思いながらのっそりと上体を起こしたのと同時に、ベッドに腰かけていた彼が立ち上がった。
それを横目に、うーん、と唸りながら伸びをして、首を回して骨をポキポキっと鳴らす。
窓から差し込んでいる朝日は、私ではなく菓子パンを頬張る目の前の彼を照らしていた。
すらっと伸びた長い脚に、広い肩幅。
サラサラの黒髪。
朝日のせいで全部が神々しく見える。
…ちっ、腹立つ。
「朝から爽やかかよ」
「は?」
「イラっとするわ」
「どーでもいいけど早く着替えて行かねーと遅刻すんぞ」
彼は呆れ顔でそう言うと、制服一式を私に向かって投げつけた。
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