episode1

2/10
17人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
「―――おう、そろそろ起きろトド」 「…………。」 寝起き一発目から失礼な冗談ぶち込んできやがる。 目覚めが悪いったらありゃしない。 「麗しき乙女に向かってどの口がトドとか言ってんだコラ」 「でかいイビキかいて寝てたからトドかと思った」 「トドっていびきかくの?」 「知らねぇ」 「適当だなオイ」 正直、この軽快なやりとりは嫌いじゃない。 寝起きじゃなければもっとキレのある返しが出来たのに、なんて思いながらのっそりと上体を起こしたのと同時に、ベッドに腰かけていた彼が立ち上がった。 それを横目に、うーん、と唸りながら伸びをして、首を回して骨をポキポキっと鳴らす。 窓から差し込んでいる朝日は、私ではなく菓子パンを頬張る目の前の彼を照らしていた。 すらっと伸びた長い脚に、広い肩幅。 サラサラの黒髪。 朝日のせいで全部が神々しく見える。 …ちっ、腹立つ。 「朝から爽やかかよ」 「は?」 「イラっとするわ」 「どーでもいいけど早く着替えて行かねーと遅刻すんぞ」 彼は呆れ顔でそう言うと、制服一式を私に向かって投げつけた。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!