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そろそろ彼の路上教習が終わるだろう時間。
駐輪場で桃子とメールをしていた。
教習所の中を何度も覗いていると、やっと彼の姿が見えた。
彼は女の教官と笑って何か話していた。それでなかなか出て来なかったのだろう。
女の人と話している所を見ただけで、とても胸が痛くなった。
駐輪場に彼が近付いてきたことを気配で確認してから顔を上げた。
「今、帰り?」
口角をあげて話しかけてきた佑典くんに、またときめく。
「はい」
「そ、俺も」
彼は自転車のかごに荷物を入れてから、ポケットから出した携帯電話を確認したようだった。
「時間、ありますか?今?」
一瞬、彼は驚いた表情を見せた。
積極的すぎるかもしれない。でも、こんなチャンスは次はいつ訪れるか分からない。待っているだけでは、きっと何もはじまらない。
彼は優しい目で、ん?と言った後、少し笑ってから言った。
「あ、うち?くる?」
「はい」
と即答した私に言った言葉。
「凛ちゃん、かわいいね」
胸が、締め付けられる。
彼に抱きついてしまいたい衝動が沸き起こる。
「じゃあ、行こっか。近くだから」
「はい」
知り合ったばかりの男の人の部屋へ行くなんて、今までなら考えられない。でも、私は彼に出会うために生まれてきたのだとさえ思えた。
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