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その直感は正解で、軽く唇が触れた。
一度唇が離れてから、彼は両手で私の背中や腰をなぞりながら言った。
「好きだよ」
もう一度、唇が触れる。目を閉じると、目尻から涙が流れた。
「どうして泣くの?」
耳元で彼が言った。
「嬉しくて」
震える声で答えると、彼が今度は涙の流れた頬にキスをした。
それから何度も長いキスをした。
これでは足りない。もっと触れたい。もっと彼を知りたい。
「ごめん、送れなくて」
玄関で彼が申し訳なさそうに言った。
「大丈夫です。バイト、頑張って」
「ん、ありがとう。またゆっくり来てね」
「はい」
ドアが閉まった後も、まだ胸が高鳴っていた。
嬉しくて嬉しくて。
彼のことしか考えられない。
もう彼しか見えない。
先に見えるバッティングセンターのナイターの明かり。そこに集まる小さな虫たち。何を見ても不快を感じることがない。すべての景色が違って見えている。
今別れたばかりなのに、彼に会いたくてたまらない。
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