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まるで絵の具をべったりと塗りつけたような鮮明すぎる青が広がっている。瞬きが増えるのは眩しさのせいだろうか。見上げた空は十字に光り、乾いたアスファルトを照らしていた。 こんな暑い日になんでこんな苦労をしなければいけないのだ、と苛立ち、自転車のペダルにかけた足の力が抜ける。 社長命令で自動車教習所へ通うはめになったのだ。 そして、これが私を、狂わせた。 だらだらと自転車を走らせると、やっと見えてきた。 去年改装したばかりの建物は黄色の強いクリーム色。それを囲む花壇には小さな花が植えられている。 とても自動車教習所には見えない。立派なホテルのようだ。 学生時代、教習所で出逢いがある、などと盛り上がったこともあったが、そんな期待は微塵もなかった。とにかく、自転車のペダルを踏む毎日から早く解放されたいと願うばかりだ。 駐輪場に着いた頃には汗かきではないはずの背中にシャツが張り付いていた。 扉を開けるとさほど若くもない女性が受付に座っている。 とりあえず待ち合いの長椅子に腰掛けた。 汗が、じわりと湧き出る。 正面に見える大きな時計が午後6時を知らせた。その音につられて顔を上げた時、見覚えのあるシルエットが視界に入った。 長身で短髪の黒髪。 大きな目に整った顔立ち。半袖のシャツから日に焼けた筋肉質な腕が伸びている。遠目でも、かなりのハンサムだと分かる。 彼も不思議顔でこっちを見ている。 誰だろう? いや、絶対に知っている人だ。 誰だ? 記憶の糸を辿る。 -思い出した。 早希の彼氏だ。高校時代、駅で早希と一緒にいるのをよく見かけた。話したこともあるはずだが、名前が思い出せない。 「凛ちゃん、だよね?」 ゆっくりと近付いて来た彼が私に問いかけた。
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