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「凛ちゃん今日仕事終わって暇?」
昼休み姫に誘われた。
週末で明日は仕事も休みだ。
「うん、とくに何もないけど」
「よかった。じゃあご飯行こ?修二たちと」
「うん」
姫は整備士の修二さんと付き合っていて、最近よく三人で夕食に行くようになっていた。
姫が私を気遣ってくれているのはよく分かる。だから私は姫の前でも桃子の前でも、佑典くんの話はしないようにしていた。佑典くんにメールするのももうやめた。
でも、そんなことで忘れられるはずもない。
今となっては、どうして彼と出会い好きになってしまったのかと毎日思う。こんな思いをするくらいなら、彼と出会わなければよかった。
残業の修二さんを少し待ってから、修二さんの車で店へ向かう。姫が沖縄料理の店を見つけたと言っていた。
『修二たち』と姫が言ったことを聞き流していたけれど、到着した赤い外観の小料理屋の前で待っていた知らない男の人が修二さんに手を上げて挨拶した。
スーツにネクタイを締め、短い黒髪をきっとワックスで立たせている。きっちりとした身なりが私からはずいぶん大人の男の人に見えた。
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