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「俺の高校の時の友達」 修二さんはさらりと紹介した。肩までの黒髪を鳥の尾のように結び、いつもつなぎの作業服に油で爪を黒くした修二さんとは全く違う仕事をしているだろうと容易に想像がつく。 私は軽く会釈し、4人で店内へ入った。 いらっしゃい、と威勢の良い挨拶が飛んでくる。 赤を基調とした店内の所々には透き通った海の写真が貼られている。沖縄を意識した置き物が沢山飾られ、店内に流れるBGMもきっと沖縄の曲だろう。 修二さんが今度は彼を詳しく教えてくれた。 森谷さんと言う名前で役所で働いているそうだ。年は修二さんと同じ24歳。やはりずいぶん年上だ。私の向かいに座った森谷さんからは嫌味のないワックスのにおいがした。その瞬間、いつも煙草のにおいのする佑典くんを思い出した。いや、思い出したと言うと語弊がある。強く思い浮かべたのだ。佑典くんが頭の中から消えることなど、出会ったあの日から一秒もない。 笑って話す姫たちと同じように、私も笑って相づちを打つ。作り笑いさえできなかった時に比べると、きっと私は強くなった。 彼女はいないと言う森谷さんと私をくっつけようとしている姫たちの魂胆は見え見えだった。それならその作戦に乗っても良い。 佑典くんを忘れられる方法があるのなら、私が知りたいくらいだ。
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