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今日の行き先は姫のおすすめの焼肉屋だった。焼肉屋へ友達と行く、というだけで大人になったような気がしていた。 店内は賑やかで、煙が充満していた。鬱陶しいくらいの煙たさが、私の心の中のようだ。 今日もスーツ姿で現れた森谷さんは、相変わらずワックスのにおいがした。 店を出てから、森谷さんが驚きの発言をした。 「俺、凛ちゃん送って行くよ」 一瞬、姫と修二さんの困惑が伝わってきた。 「あ、そうね、そうしてもらいなよ」 姫はハッとしたように言った。 「大丈夫。ジェントルマンだから」 森谷さんは口角を上げて言った。 「凛ちゃん、大丈夫?」 修二さんが私の顔色を伺ってきたけれど、なんだか何もかもがどうでもいいことに思えた。 森谷さんが紳士でもそうでなくても、もうどっちでもいい。 「大丈夫です」 と答えた。 駐車場に着くと、修二さんの車から姫が紙袋を持ってきた。 「これ、私と修二から。おめでとう」 黒い小さな紙袋は、私でも知っているくらい有名なブランド店のロゴが入っている。 おめでとう、と修二さんにも言われて、涙が込み上げた。 妹が欲しかった、と何かと私を気遣ってくれる姫。それなのに私はずっと思っていた。 特別な日くらい、特別な人と過ごしたい、と。
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