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「早希の友達」
「出た。今や幻の早希ちゃん」
直正くんの言葉を、梶くんがまた茶化した。
梶くんは切れ長の目にサラサラの黒髪がよく似合っている。羨ましいほどにきれいな肌だ。男らしさを感じさせる直正くんとは対称的に、線が細く上品そうに見える。
「早希ちゃんの友達なら、俺たちのひとつ下かな?」
佑典くんがまた私に話しかけ、胸が痛いような不思議な感覚を覚えた。
「今年19です」
「そっか」
そう言って私を見た目がとても優しくて、またときめいた。
なんだろう。この感じ。
彼に興味を持たない人には分からないかもしれない。この人の放つ独特の雰囲気。彼のまわりだけ、違う空気が流れている。
「じゃあ、凛ちゃんまたね」
直正くんが私に手を振ると、佑典くんもまたね、と言った。
そのまた、を期待して私も手を振った。
三人は何か話しながら笑い、教習所を出て行った。
この数分のなんでもない出来事が、私には特別に感じられた。
好きになった。
唐突すぎるが、確信していた。
どんな人か知る前に、考える前に好きだと直感した。
どう見ても外見は他の二人の方が格好良いだろう。でも、この人だ、と分かる。
彼を知らずに過ごしたこの18年間が、意味のないものだったと、本気で思ってしまうほどに、一瞬にして、どうしようもなく惹かれてしまった。
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