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家に着いても寒気が止まらない。
部屋へ入り花束を机の上へ置いた。甘い匂いがする。姫たちにもらった紙袋からは小さな箱が出てきた。包みを開け、箱の蓋を開けた。
ピアスだ。水色の小さな石は私の誕生石。鏡を見ながらピアスをつけてみた。久しぶりでうまく入らない。首筋にかかる髪にぞくりとした。
あの日彼の唇が何度も触れた。そしてこの髪にも。胸が痛い。
空になったピアスの箱を引き出しに入れようとした時、夏の花火で使ったライターが視界に入った。
カチリ
火をつけてみた。
長く揺れる炎はジリジリと音をたてて燃えている。
私の届かないこの思いも切なさも、燃えてしまえばいい。
気がつくとライターの火を手首に当てていた。その熱さで、胸の痛みも感じずにいたかった。
「あっつ」
ライターを持った親指の熱さで我に返る。
火を押し付けた手首は赤く湿疹のように腫れジンジンと痛みはじめた。こんなことをしている自分が惨めで仕方なかった。
悪寒もひどくなり確認しなくても分かる。熱が上がってきている。
ベットに横になると鳥肌が立つほどの悪寒と頭痛に襲われた。手首は脈打つ度に痛み、腕にまで伝わる。こんな時でも私は考えている。
佑典くんに会いたい。
19年間で一番虚しい誕生日になった。
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