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誕生日の翌日は体が重く、佑典くんに会ったあの日無駄に有給を使わなければ昼から出勤できたのに。
私はどこまでも間が悪い。
いつも通り出勤すると待ち構えていたように姫が話しかけてきた。
「昨日あれからどうだった?」
森谷さんのことだとすぐに分かる。
「ちゃんと真っ直ぐ送ってくれて特にどうもなかったよ」
すぐに朝礼が始まり、姫はふぅん、と少し残念そうに言った。
花束をもらったとか、連絡先を聞かれたとか、それを面白可笑しく話せる余裕はなかった。森谷さんの方も修二さんに何も言ってはいないのだろう。
昼休み、森谷さんからメールがきていた。メールのマークがつくと、佑典くんからかもしれない、とまだ期待してしまう自分がいる。
『森谷です。昨日はありがとう』
何と返事するのが正解か分からなかったけれど、無難な返事をした。
『こちらこそありがとうございました』
『また連絡します』
すぐに返信がきた。それこそ、どう返信をしていいか分からない。だいたい森谷さんに好意を持たれているのかすら分からないし、もしそうだとしても理由も分からない。姫に相談するわけにもいかず返事も送らないままにしていた。桃子に言えば新しい出会いだときっと喜ぶに違いない。でも、私の準備はまだ全く出来ていない。
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