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自分がどんな表情をしているのか、全く予想ができない。佑典くんは私に気付き、少しだけ、本当にほんの少し顎を下げた。私はうまく答えられず目を反らした。 体が熱い。 「凛ちゃん?」 姫の言葉にはっとし、立ち止まっていたことに気付いた。 慌てて歩き出す。うまく歩けているかも分からなくなってくる。 私は少しも彼を忘れてなんていない。 分かっていたけれど、思い知らされた。 捨て切れない思いも、時間とともに薄れているかもしれないと思っていた。 そんなはずはなかった。 彼を纏う空気に絡められた私は、抜け出せていない。 雨の音が少しずつ小さくなる。私の心はいつまでも湿ったままだ。抜け出せない迷路を行ったり来たりしている。 認めたくなかった。でももう十分すぎるほどに分かっていた。 彼の望みは一度限りの関係。明らかに自分に好意があった私相手に、いとも簡単にその目的を遂げた。 認めたくなかった。彼を信じていたかった。 そして今、それを認めたところで何も変わらない。 掴むことも捨てることもできないこの思いに、狂いそうだ。
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