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「お前には、済まないことをしたと思っている」
父が語りだした。
「パパたちは、その真脇 達美という歌手のことを、男とのスキャンダルと暴力事件を起こして首になった芸能人。としてしか見ていなかった。
だが、お前から取り上げたCDを見つけられないよう、会社で捨てようとした時、見ていた部下に言われたんだ。
その男というのは、真脇 達美のデビュー前から付き合っていた恋人で、彼女がデビューしてから、なかなか会えなかった。
そんな2人が久しぶりに会ったコンサートで手を握り合ってしまった。
それを理由に他のファンからリンチを受けそうになる。
襲ってきたファンにとっては、許しがたい行為に思えたのだろうな。
それを止めさせようと真脇 達美は舞台を飛び下り、乱闘になった。
完全な正当防衛だと言うのだ」
「だから、これは私たちからのお詫びの品よ」
と、母が引き継いだ。
「そして、お祝いでもあるの。あなたが、自分の好きな曲を選べる大人になってくれたことへの。
でも、不安もできたわ。
あなた、私たちがCDを取り上げる時、何も抵抗しなかったでしょ? 」
「……うん」
責められたように顔を伏せた咲。
目上の人に逆らってはいけない。
それも、これまでに躾けられてきたことだ。
それを見て両親は、さらに済まなさそうになった。
父が、穏やかに言った。
「そこで、お前に一つのショック療法を思いついた」
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