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ラストダンス
オレは緊張している。ドキドキしている。
ここはある観光地の散歩道にある新しくできた公園だ。特にバリケードもなく、入ってもよさそうなのだが、誰も入ろうとはしない。オレにとっては、うってつけの場所になったんだ。
オレと楓は、記念日を好む。お互いの誕生日だけではなく、印象に残った日を記念日にするんだ。今日をその日にしようと、オレは勢い勇んでいた。
言葉は考えていた。この場所は、数ある楓のお気に入りの中でも、唯一と言っていい場所だ。オレはここで、この場所で、楓に告白しようと考えたのだ。
特に今日は、記念日にする妥当な日、というわけではない。記憶に残る日が、記念日になるんだ。
オレは何度も何度も繰り返し、オレの考えた言葉を頭なのかで繰り返す。
「へー。歴史の散歩道って言う感じで、いいところじゃない」
楓は少しはしゃいでいる。雰囲気は最高だ。数あるモニュメントに眼をやる。歴史的に有名な歌人などの詩を掘ってあるプレートを見入る。
楓は歴史には全く興味はない。従って、社寺仏閣にも興味はない。しかしオレといる時はなんでも興味を示すようになった。こういう歴史ある観光地には古い歴史を持つ建造物は多数ある。それをひとつひとつ、丁寧に見て回る。特に入館料を支払った場所はうまく人の波を逃れ、繰り返し何度でも観る。
「あ、ここってキレイかも…」
楓はもみじが大好きだ。特に紅葉するこの場所が一番のお気に入りだ。季節を通して、必ずここに来る。未だ機会はないが、冬に雪でも積もったら来ようと思っている。
「寒いからイヤだよ…」
まずはきっとこう楓は言うと思っている。しかし始めて訪れた帰りには、必ず言う言葉がある。
「誰と観るか、だよね」
気に入った証拠だ。ほとんどの場所でこう言うのだ。
今までに、初詣など自分から望んで行くことはないと言っていた。しかしここ3年は、オレと一緒に初詣のデートを楽しんでいる。オレは気になって聞いた。
「特にお願いすることなんてないけど、デートにはいいじゃん!」
理由はないようだ…。ただ、違ったカタチのデートをしたかったようだ。毎年続けているということは、気に入ったのであろう。
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