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ソウタが…ターゲット?
目を見開いてソウタを見た私の手首をソウタが再びぎゅっと力を入れて握った。
見る間に顔色が悪くなっていく彩希さんはもう、さっきの余裕の笑顔はない。
「か、隠してた訳じゃないよ?ただ、ソウタに言うほどの事でも無いって思ってたから…」
「何を?」
「元の店でよく来てくれていた常連さんと話してて、不意に『ソウタって人と付き合ってたんだってね』って名前出されて…。
口では『何の事?』ってごまかしたけど。あの時は咄嗟の事で、多分表情に出たと思う。」
元の店からの常連さん…。
咄嗟にカケルさんの話を思い出した。
『高田彩希が喫茶店を移ったらそれ目当てで移った客が何人もいるって噂がある』
「ご、ごめん、ソウタ。本当に何も知らなかったの。それ以外でソウタの事話した事無いし…もし私からソウタの情報が漏れたならそれだと思う。」
「でも、それだけじゃ彩希さんから漏れたかはわからないよ。表情は変えたかもしれないけど、口には出さなかったんだし。」
横から口を挟んだら、彩希さんの瞳が揺れた。
ソウタはそれを見逃さない。
「…まだ何かあるね、彩希。」
彩希さんが唇を噛み締めた。
「同じ日の閉店後に、店長室で、オーナーが誰かに電話しいてたのたまたま聞いちゃって…
『上手く、伏線貼りました』って。
その時は繋がらなかったから、全くスルーだったけど、今考えれば…」
もしかすると、関係を隠してるソウタの名前を出されて動揺して、接触するかもしれないって踏んでの事…。
ソウタが深い溜め息をひとつ吐いた。
「…なるほどね。『俺』をあぶり出すためにお前も利用されてるって事か。」
目線を合わすことなく、何かを考えているソウタは驚く程鋭くて冷たい表情で、思わず唾を飲み込んだ。
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