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カケルさんの話では、飼い主は東京在住の歳の離れた夫婦二人。毎年夏の暑い時期だけ避暑目的で湘南にある別荘に来ている。黒猫も一緒に毎年来ているらしく、二人が黒猫と一緒に庭先に居るのを目撃されている。
けれど、ある日突然居なくなった。
黒猫…ではなく、夫婦が。
「依頼人はこの夫婦の甥御さんで、黒猫を引き取りたいと言っている。」
失踪した夫婦については、すでに警察に届け出を出しており、私達の出る幕ではないらしく、最初にミヤビさんが言ってた様に、『猫探し』が今回の依頼のよう。
いや、『猫探し』と言うよりは、孤独にここに住み続け、帰らぬご主人を待っている猫を捕まえて欲しいと言うのが正確な依頼。
依頼人も捕まえようとしたけれど、捕まらず、困り果ててカケルさんに依頼をしたらしい。
「猫を捕まえるなら、ミヤビでしょ。」
ソウタさんの意見でミヤビさんに白羽の矢が立ち、何故か私をミヤビさんがご指名。
「そうだな、男女で行った方が何かと事を運びやすいよ。」
カケルさんは賛成し
「何でだよ!」
カイトは反対した。
ソウタさんとヤマサンは笑って傍観していた。
その雰囲気があまりにも自然で。
探偵をやろうと言って集まったわけだから、多少顔見知りも混ざっているのかもと思ったけれど…5人全員がよく知っている仲な気がする。
「ミヅキちゃん!行くよー!」
張り切るミヤビの後を追いながら不意にそんな風に考えた。
◇
「ここが現場ですか」
現場に到着すると、腰に手をあてて見上げるミヤビさん。
目の前にある家は、ツタが壁を伝い庭の草は伸びきって人の気配はまるでない、廃屋の様な形相を呈していた。
平屋で奥が長い構造になっているのか、一歩敷地にはいると割と広い。
「ご本人が登場してくれると良いんだけどね」
ミヤビさんが先に草を足でかき分けて進んで行く。私がそれに続いた。
高く伸びた雑草は一歩進むごとにガサガサと足に絡み付いて歩きずらい。意識を足に集中しながらふとした疑問を投げかけた。
「あの…ミヤビさんは猫に詳しいんですか?」
「全然?動物全般が好きで慣れてるだけだよ。」
そうなんだ…
「それよりさっ!」
「きゃあっ!」
急に立ち止まって振り返ったミヤビさんにそのまま突っ込んだ。
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