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「それにしたってね…あそこから連れ出した所でさ。」
「ここに連れてくれば良いじゃん。近くに居た方が安心でしょ?」
私の言葉にミヤビがピクリと少し体を揺らし、真紀子さん以外の3人は一瞬目を見開いた。
そんな皆の反応が気にはなったけれど。
…きっと教えて貰えないよね、私には。
だけどそれでも、ソウタの役に立ちたい、今は。
◇
行った先で着替えたメイドの服は予想よりもだいぶ地味で動きやすさを計算されたような服だった。
…でも。
「ソウタ嫌い。」
「はっ?!知るか!!」
控え室でメイクをしてあげたソウタのメイド姿は、私よりだいぶ可愛かった。
いや、元々目は綺麗な二重で瞳も琥珀色だし、その上、童顔で色白。
男の人にしては小柄で華奢だから似合うだろうとは思ってたけど。
想像を遥かに凌駕している似合いぶり。
「ったくさ…。こんなのどう考えたって彩希にはバレるっつーの。」
完全に可愛いメイドの姿なのに、あぐらをかいてブツブツ言ってるソウタの隣に腰をおろしたら
タイミング良く少し清楚な雰囲気の長い髪をお団子にした女の子が入って来た。
「えっ?ソウタ…?」
テーブルに肘をついたまま憮然とした態度で舌打ちをするソウタに柔らかい微笑みを浮かべるその人
「相変わらず何でもするんだね、ソウタは。」
「うっさいわ。」
むくれてるソウタにふふって笑うと今度は私に視線をずらした。
「相棒ですか?それとも…プラスそう言う仲?」
「え?!ち、違います。」
「ふ~ん…で?
今度は何調べてんの?もしかして…私の事?」
表情を変えないまま発せられた彩希さんの言葉に内心ドキリとした。
顔に出なかったのは
ソウタが机の下にあった私の手首を咄嗟に引っ張ったから。
「何か…調べられるような、心当たりがあるんですか?」
そう問いかけた私に人差し指を立てる彩希さん。
「情報はギブアンドテイク、でしょ?ソウタ。」
ソウタが時折見せるのと同じ柔らかい微笑み。
「でも、約束の日でもないのにそんな格好までして、私に会いに来てくれたから、聞かれた事には答えるよ。」
嬉しそうにしてる彩希さんをソウタがちらりと見てから溜息をついた。
「お前さ、最近何か気になる事あった?」
一瞬彩希さんの肩がビクッと揺れた気がした。
でも、笑顔は崩さない。
この子もきっと修羅場をくぐり抜けて来てる子だ。
こう言う空気に慣れてる。
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