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彩希さんの話を聞く限り。
ここの喫茶店に彩希さんを移らせた時点から相手の計画は始まってたのかも知れない。
ソウタに聞いた情報だと『コノヨノオワリ』をやらせてたその店は、潰れて今は無い。
地味で無名なこの店が彩希さんに声をかけたのも、きっとなるべく彩希さんを目立たせず、自分たちが彩希さんに接触しやすいようにするため。
目立って、人気者のままだと、かえって人目に付いて、接触しにくいもんね。
そして『木を隠すなら森の中』
彩希さん目当てでこっちに流れて来た客に『監視兼仕掛け役』を紛れ込ませた。
常連客を買収したのか、常連客のフリをして近づいたのかは定かじゃないけど…
全ては『ネズミ』である、ソウタをあぶり出すため。
一体、何の為に?
潜入して『コノヨノオワリ』の元締めを一網打尽にしたソウタへの報復…?
でもそれならば、その中心は誰なんだろう?
『コノヨノオワリ』を一手に仕入れ、販売してた『元締め』の中心人物達は一旦捕まってる。
釈放されたとはいえ、そこまでの事をすぐに部下に細かく指示出来る程の権力があるだろうか。
それと、もう一つ。
もし、彼らの目的が『報復』ならば
なぜ、『今』なんだろうか。
ソウタが潜入していたのは数年前。
体勢を立て直してから報復に乗り出したって事なのかな…
変わらず青ざめている彩希さんは申し訳無さそうな表情でソウタを見つめている。
「ごめん…私またソウタに迷惑かけてる。」
そんなアキさんに優しいいつもの眼差しへと変わるソウタ。
「まぁ、とにかくハッキリ言えるのは、その客か、別の誰かかわかんないけど恐らくまたお前に近づいて来る奴がいるよね、ここにいる限り。
そんな状況がわかった以上、ここに一人で置いとけないって事。
俺と…俺達と一緒に来て?」
「ちょ、ちょっと待って。私はアキバを離れる訳に行かない。
それはソウタだって良くわかってるでしょ?
ましてや、ソウタと一緒に行くなんて絶対に無理だよ。」
アキバを…離れられない?
隣でソウタの顔が明らかに雲って、瞳が微かに悲しく揺れた。
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